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カルニチン
1905年にウシの筋肉抽出物中に発見されたことから、ラテン語で肉を意味する「carnus」にちなんで命名されました。身体のほぼすべての細胞に存在し、とくに骨格筋や心筋に多いことが知られています。
カルニチンはミトコンドリアにおける長鎖脂肪酸の酸化とエネルギーの産生に重要な役割を担っています。長鎖脂肪酸はカルニチンと結合しないとミトコンドリアの膜を通過して酸化分解の場所にたどり着くことができません。つまりカルニチンがないと長鎖脂肪酸からエネルギーを産生することができないのです。
カルニチンは昆虫のコメゴミムシダマシの発育に必須の成分であることからビタミンBTと呼ばれていましたが、ヒトでは主に肝臓、腎臓、脳で合成されるので、厳密にはビタミンではありません。通常の食事をしている大人では、カルニチンの必要量の約75%は食事由来で、体内で生合成されるのは約25%です。極端に食事からの摂取量が少ないと必要量が確保できなくなる場合があるので、条件的必須栄養素と呼ばれます。一方、赤ちゃんのカルニチン合成量は大人の約10%と少なく、さらに筋肉量が少なくカルニチン貯蔵量も少ないため、母乳やミルクからのカルニチン摂取が大人以上に重要です。
妊娠・授乳期の女性は、赤ちゃんに多量のカルニチンを供給するため不足しがちなので、食事からの補充が大切です。植物性の食材はカルニチンもカルニチン合成の原料であるリシンとメチオニンも動物性食品より少ないので、要注意です。
また、カルニチンの生合成には、上述の2種類のアミノ酸のほかに、3つのビタミン(C、ナイアシン、B6)と鉄が必要です。これら栄養素も不足しないように気を付けましょう。
