
母乳オリゴ糖&腸内細菌とうんちの関係
- 母乳のヒミツ
- 出産前に
- 出産後に
- 母乳研究
母乳の赤ちゃんとミルクの赤ちゃんではうんちの色や形、におい、回数や量などに違いがあることがわかっています。今回は、このようなうんちの性質に影響している要素についてご紹介します。
母乳を飲んだ赤ちゃんの排便サイクルは短い
母乳の赤ちゃんとミルクの赤ちゃんのうんちの性状(色調、形状、硬さ)や回数、量の違いはそれぞれ独立したものではなく、一連のサイクルによって引き起こされる連鎖的な変化だということがわかっています。例えばうんちの回数が多くなると、消化器内の滞留時間が短くなります。それによってうんちの量、形状・硬さ、色調も変化するというわけです。
母乳のオリゴ糖について
私たちは、このサイクルを早くする要素の一つが、母乳に含まれる糖質成分だと考えています。糖質の組成は、母乳と粉ミルクで最も異なる部分です。特に、複数の糖が結合したオリゴ糖の含量や組成は、大きく異なります。

母乳に含まれるオリゴ糖の量は、100 mLあたり0.9~1.9 gです。一方、日本国内で販売されている粉ミルクのオリゴ糖は、最も多いものでも100 mLあたり0.33 g。母乳の1/6から1/ 3程度です。また、母乳には200種類以上のオリゴ糖が存在し、オリゴ糖の種類も量も多いことがヒトの母乳の大きな特徴です。
このような糖質組成の違いは、うんちの糖質組成にも表れています。母乳の赤ちゃんのうんちは、ミルクの赤ちゃんよりも糖質が多く、とくに水溶性の糖質成分の多いのが特徴です。

水溶性の複合糖質(たんぱく質や脂質に結合した糖鎖)には粘液状の物性を持つものもあり、母乳の赤ちゃんのうんちの性状において粘液質が主体であることを裏づける結果と考えられます。
栄養法と腸内細菌の関係
母乳の赤ちゃんとミルクの赤ちゃんでは、腸内細菌の構成が異なっていることは古くから報告されてきました。ただ従来の培養による解析法では、腸内細菌叢の全容を明らかにするのは難しいと言われています。腸内細菌には培養に特殊な条件を必要とするものがおり、乳児の腸内細菌は約30%しか培養できないと報告されています。
そこでわたしたちは、「T-RFLP解析」という、DNAを利用した分子生物的手法を用いて、乳児の腸内菌叢を解析しました。

その結果、これまでの培養法で報告されていた以外にもさまざまな腸内細菌の存在を確認することができました。
さらに、ミルクの赤ちゃんの腸内細菌の構成は、母乳の赤ちゃんに比べて多様で複雑であること、生後1~2か月と3~4か月とでは腸内細菌が著しく異なることもわかりました。ただこのような違いが、母乳と粉ミルクのどの成分の違いによるのか、さらに赤ちゃんの成長や発育への影響を明らかにするには、さらなる研究が必要です。