
うんちからわかった母乳の影響
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意外に思われるかもしれませんが、赤ちゃんのうんちを調べることで、母乳についてより多くの情報を得ることができます。私たちは、健康な赤ちゃんのうんちについて、性状や成分、母乳の赤ちゃんとミルクの赤ちゃんの違いなどを調べた「うんちの研究」を行っています。そこでわかったことをご紹介します。
なぜ健康な赤ちゃんのうんちを調べたの?

赤ちゃんのうんちには、母乳やミルクの未消化成分、消化管の脱落細胞、分泌物、腸内細菌などが含まれます。したがってうんちは、乳成分の消化・吸収状態、消化管の新陳代謝の状況などが現れていると考えられます。これまでのうんちの研究では主に下痢や出血便など赤ちゃんにとって好ましくない状態と腸内環境との関連を明らかにすることを目的としたものがほとんどでした。
一方、健康な赤ちゃんにおいても、うんちの状態は様々であり、多くのお母さんたちを悩ませる要因の一つとなっています。そこで、私たちは健康な赤ちゃんを対象に、栄養方法の違いがうんちの性状や成分などに与える影響を調べました。

研究を行う上で大きな課題となったのがうんちの回収方法でした。通常の紙オムツでは、うんちとおしっこを分けるのが難しく、また、うんちの水分はおしっこと一緒に高分子ポリマーに吸収されてしまうことから、うんち本来の性状を調べることができません。そのため本研究では、うんちとおしっこを分け、うんちの固形分と水分の全量回収を可能にする専用オムツを開発しました。
母乳とミルクで赤ちゃんのうんちの性状は変わる!?

うんちの性状は個人差が大きく、目視で観察しただけでは、母乳とミルクの違いは明確ではありません。そこで、うんちを色調や形状、におい、量などの項目別に調べました。
1.便の色調

色調は、色彩色差計を用いて数値化しました。その結果、母乳の赤ちゃんのうんちの色は明るく、赤や黄色が強い傾向が認められました。
一方、ミルクの赤ちゃんのうんちは暗く、緑や灰(青)色が強い傾向が認められ、両者に明確な違いがあることがわかりました。
2.うんちの形状やにおい

母乳とミルクでは、うんちの形状やにおいにも違いがあることがわかりました。母乳の赤ちゃんのうんちは全体的に水分や粘液が多く、水状や泥状のうんちが多く認められました。また、においはヨーグルトのようなすっぱい臭いが主体でした。
一方、ミルクの赤ちゃんのうんちには粘土状など、固形分が多く、においは大人と同じようなにおいが多く認められました。
3.うんちの回数とうんちの量

そのほか、赤ちゃんのうんちの回数や量にも違いが見られました。一日のうんちの回数を比較したところ、母乳の赤ちゃんは月齢1か月で平均5.6回、3か月で2.5回でした。
一方、ミルクの赤ちゃんは月齢1~4か月の平均が2回未満と、母乳の赤ちゃんと比較して少ないことがわかりました。
一方、1回あたりのうんちの量は人工乳のほうが多いため一日あたりの量にはほとんど差がありませんでした。
近年、母乳の赤ちゃんとミルクの赤ちゃんの見かけ上の成長や発達などは、ほとんど変わらないといわれています。しかし、今回ご紹介したようにうんちの状態にはまだまだ大きな違いがあります。これは、母乳と粉ミルクの成分や消化・吸収性、また腸内細菌の形成に違いがあるためと考えられます。