
食生活で母乳が変わるって本当?
ママの食べものと母乳の成分の不思議
- 出産後に
- 母乳コラム
母乳には乳児の成長発達に必要なすべての栄養素が過不足なく含まれている、と考えられています。そうだとしたら、母乳成分は母親の食事の影響を受けないはず。でも実際はどうでしょう?今わかっていることをまとめました。
たんぱく質の摂取量が増えたら、母乳のたんぱく質も増えていた
たんぱく質は筋肉や臓器を構成する重要な要素であり、酵素やホルモン、免疫物質としてさまざまな機能を担う、私たちが生きるのになくてはならない成分です。乳児が必要とするたんぱく質の量は成長の段階で変わるので、母乳のたんぱく質は分娩後の日数(泌乳期)にともなって減っていきます。母乳のたんぱく質は母親の食事の影響は受けないといわれてきました。
ところが、私たちが行った、1960年と1989年に全国母乳調査の結果を比較すると、1989年には母乳のたんぱく質がおよそ14%増えていました。厚生省の国民栄養調査によると、日本人一人当たりのたんぱく質摂取量は1960年の69.7gから1989年に80.2gと15%増えていましたので、たんぱく質の摂取量が増えたことで、母乳のたんぱく質も増えたものと考えられます。


地域によって母乳中の成分は変わる!?

母乳成分には地域差がある、と聞いたことありませんか?最近は流通の発達により、食生活の地域差は小さくなってきているように感じますが、それでも地域独自の食文化や味の好みは受け継がれていると思われます。
私たちは全国母乳調査で、母乳成分の地域差についても調べています。そして、母乳中のナトリウムは食塩摂取量の多い東北地方で多く、食塩摂取量の少ない近畿、中国・四国で少ないことを明らかにしています。これも普段の食生活(=食習慣)の影響と考えることができます。母乳中のナトリウム含量が乳児の成長やその後の健康に影響することを示した報告はありませんが、お母さんご自身の健康のために塩分の摂り過ぎには注意しましょう。
ママが食べた食事のにおいも母乳にも移っちゃう?
ちなみに、授乳中のママの食事によって母乳のにおいが変わることも報告されています。例えば、ニンニクやカレーを食べた後に母乳の匂いが変化したという報告がありますが、こうした変化は一時的なものであると言われています。
かつては匂いや味覚を科学的に分析するのは困難でしたが、感度の良いセンサーが開発されてきていますので、乳児の好む匂いや味が分かる日が来るかもしれません。