母乳の子はじょうぶといわれる、その訳は…

母乳の子はじょうぶといわれる、その訳は…

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母乳は赤ちゃんの成長に必要な栄養素を過不足なく含むだけでなく、赤ちゃんの未熟な機能の発達をうながす様々な成分も含んでいます。さらに、赤ちゃんを感染やアレルギーから守る働きもあります。このような多様な働きが、母乳の持つ神秘的な力です。

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「母乳の子はじょうぶ」といわれるのは、なぜ?

母乳で育った子はじょうぶ……そんな話を聞いたことはありませんか?
赤ちゃんは免疫機能が未熟なために細菌やウイルスなどに対する抵抗力が弱く、体調を崩しがちです。しかし、母乳を飲む子には感染性の病気や炎症などのアレルギー性疾患が少ないことが多くの論文で示されています。これは、母乳には、細菌やウイルスなどの病原体やアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)から乳児を守る成分が含まれているからなんです。

私たちは長年の母乳研究で、以下のような乳児を守る母乳の働きを明らかにしてきました。

(1)細菌やウイルスに結合して、感染を防ぐ
(2)乳児の消化管を成熟化させ、バリア機能を高める
(3)乳児の免疫機能を活性化する

細菌やウイルスに結合して、感染を防ぐ

細菌やウイルスに結合して、感染を防ぐ

病原菌やウイルスは消化管の細胞表面に付着し、感染します。病原性大腸菌やコレラ菌が産生する毒素も消化管細胞に結合して、毒性を発揮します。母乳には、病原菌、ウイルス、細菌毒素に結合することで、細胞への付着を抑えることで、病気を防ぐ成分があります。

消化管の細胞を成熟化させて、バリア機能を高める

消化管の細胞を成熟化させて、バリア機能を高める

たんぱく質は消化酵素で分解されて、ペプチドやアミノ酸になって吸収されますが、赤ちゃんではたんぱく質が十分に消化しきれないことがあります。さらに生まれたばかりの赤ちゃんの消化管では、細胞と細胞のあいだにすき間があり、ここを通って未消化のたんぱく質や病原体が体内に入り込み、アレルギーの原因になったり、感染を起こしたりします。

母乳には、赤ちゃんの消化管の細胞が増えるのを助けたり、細胞同士が密着してすき間を小さくする働きがあります。さらに消化能力を高める働きもあり、未消化のたんぱく質や病原体が体内に入り込むのを防ぎます。

乳児自身の免疫機能を高める

乳児自身の免疫機能を高める

母乳には、赤ちゃん自身の免疫機能を高める働きがあります。たとえば、体内に侵入してきたウイルスなどを攻撃する免疫細胞を活発にしたり、免疫グロブリンの産生能力を高めることで、赤ちゃんを感染から守っています。

赤ちゃんは生まれた瞬間から、細菌やウイルスなどの病原体やアレルゲンなどがいっぱいの外界にさらされます。母乳には、異なるメカニズムで外敵から赤ちゃんを守る、いろいろな成分が含まれています。赤ちゃんに栄養を届けるだけでない、母乳って本当に神秘的です。

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